アメリカ軍がアフガニスタンから撤退!その理由は?

2020年3月29日にアメリカは、アフガニスタン戦争を収束に向かわせる歴史的合意がなされたと発表しました。それはアメリカとタリバンの合意であり、そこにアフガニスタン政府は含まれていません。

対立関係にあるタリバンとアフガニスタン政府が対面することなく、本当に和平合意がすすむのでしょうか。新型コロナウィルスの対応で世界が揺れているこの時期に行われた突然の合意。その背景をまとめてみました。

アメリカとタリバンの合意の内容は?

4月10日に発表されたアメリカ軍の報告によると、部隊はすでに撤退を開始。合意の署名日から14か月のうちに、アメリカ軍は完全撤退を目指すとのこと。そのほか、以下のように、タリバンと複数の合意が成立したと報告しました。

①135日以内に米兵の4割を撤退させ、8600人に減らす。
②アフガニスタン政府は最大5000人、タリバンは最大1000人の捕虜を解放。
③タリバンはテロ組織と手を切る。
④アフガニスタン政府とタリバンは和平に向けて協議する。

合意内容に対するアフガニスタン政府の反応

アメリカは合意が成立していると発表しているものの、実際は完全合意まで至っていないようです。アフガニスタンのアシュラフ・ガニ大統領は、タリバンの捕虜1000人の解放は求めることを承諾。しかし、自国の5000人の捕虜を解放することには同意をしていません。そのため、ほんとうに合意が形成されたのかは定かではありません。

アメリカ軍のアフガニスタン侵攻の背景

アメリカ軍のアフガニスタン駐留の歴史は20年前にさかのぼります。その始まりは2001年9月11日の米国同時多発テロ事件。通称、9.11テロ事件です。テロ攻撃を受けたことをきっかかに、アメリカをふくむNATO(北大西洋条約機構)はアフガニスタンに軍事行動をしかけました。

当時のブッシュ大統領は、この攻撃は「テロの報復」であると位置づけ、次のオバマ政権もアフガニスタン戦争を継続することを肯定します。9.11テロ事件の記憶が色濃く残っていたこともあり、アメリカにおけるアフガニスタン戦争継続の支持率は高く、20年におよぶ「アメリカ史上最も長い戦争」となりました。

中国の影響も見逃せないアフガニスタン

アメリカがアフガニスタンからの撤退を躊躇したことには、中東をめぐる勢力争いが背景にあったという見方もあります。ラダクは、インド、パキスタン、中国、チベットが勢力争いを繰り広げているエリア。現在も国境付近では緊張が続いています。アメリカ軍が不在になると、中国の影響が強くなる可能性が高く、撤収のタイミングを逸したとも言われています。

アフガニスタン問題が片付いたから米軍撤収なのか?

アメリカ軍が撤収する理由は、アフガニスタン正常化のめどが立ったからなのでしょうか。現実にはそういうわけではなさそうです。合意が締結された直後にタリバンがアフガニスタン政府軍を攻撃。そこでアメリカ軍は空爆にて反撃しています。合意したとはいえ、あやうい状況が続いているというのが現実なのです。

さらにアフガニスタンは政治的に二分化された状況。そのためアメリカ軍が撤収するまえ、異常事態となりました。首都カブールにて、2期目を迎えたガニ大統領が就任セレモニーを開催。すぐあとに、ガニ大統領と対立しているアブドラが、支持者と一緒にもうひとつの大統領就任式を強行しました。アメリカ軍は、アフガニスタンの内政の混乱をそのままに、撤収を決断したとも言えるのです。

政治的な不信感が色濃く残るアフガニスタン

アフガニスタン政府が安定しない理由のひとつとして、これまでの犠牲の大きさが挙げられます。国連は2009年から戦闘による犠牲者の数を調査。それによると、一般市民の犠牲者は3万人以上ということです。アフガニスタン治安部隊になると6万人以上。さらに、タリバンをはじめとする反政府側の犠牲者も4万人を越えました。犠牲者の多さゆえ、スムーズに和平合意するわけにはいかない状態にあるのです。

アメリカ軍のアフガニスタン撤退はプラスに働く?

また、タリバンが和平合意を拒否した場合、アフガニスタンの国政はさらに不安定になるでしょう。タリバンのおもな輸入源は麻薬。その収益は2億ドルを超えるとも言われています。財政的にも強力な力を持つタリバンが、アメリカ軍の撤収後に再び力を盛りかえす可能性は十分にあるのです。

また、把握されていないテロ組織のネットワークが残存しているアフガニスタン。2019年の12月に、現地で市民を支援していた医師の中村哲さんが襲撃され、命を落とす事件がありました。この事件が起こった理由は未だに不明。アフガニスタンには把握されていない武装化組織が存在しており、アメリカ軍の撤収後に表面化する可能性が指摘されています。

アメリカが撤収後にするべきこと

アフガニスタン政府が機能不全に陥ることは、アメリカ政府や軍隊にとっても喜ばしいことではありません。なぜなら、政府が他の対立する組織に敗北すると、アメリカも敗北したかのように見えてしまうからです。そのためアメリカは、アフガニスタンから撤収するにしても、政府を脅かすタリバンとの和平交渉を続けていくことが必須です。

まとめ

このようにアフガニスタン問題は課題が山積みです。それにも関わらずトランプ大統領が米軍の撤収を急いだことには明確な理由があります。それが2020年の大統領選挙。アフガニスタン問題を解決した立役者となるため、合意がなされたことにしている可能性もあります。そのため今後のアフガニスタンに対するトランプ政権の対応を見守っていく必要がありそうです。