NHK受信料はどうして払うの?スクランブル放送化の議論の周囲のまとめ

参院選2019では、「NHKから国民を守る党」が1議席を獲得、さらには政党要件を満たしたことで大きな話題となりました。同党の目標はNHKのスクランブル放送化の実現。それが達成されたら解党する、他に類をみない単一目標型の政党です。

一般的には複数の課題を争点化するなか、スクランブル放送の実現のみをマニフェストにかかげたことで、NHKの受信料に注目度が高まることに。そこで、NHKの受信料がどのような経緯で定着したのか、そのなかでのスクランブル放送の位置づけなどをまとめてみたいと思います。

NHK受信料①:ラジオの聴取料がどの起源

日本における放送のはじまりは戦前までさかのぼります。放送するのは日本放送協会。現在は公益社団法人ですが、当初は社団法人でした。ラジオを聴くための設備を設置するには、「聴取無線電話私設許可書」が必要に。発行するのは逓信局という政府管理下の部局。それを取得した人は聴取料を日本放送協会に支払うという仕組みでした、

聴取料の支払いを求めた理由が、放送を公共性の高い事業にするため。民間の会社はラジオ事業に参入することはできませんでした。第二次世界大戦がはじまる前までは、大日本帝国政府が放送する内容をすべて決定。日本放送協会が放送事業を独占するかたちがとられていました。

NHK受信料②:受信料を受け取る理由は放送法

戦後のアメリカによる占領期、放送事業は民間にも開放されていきます。日本放送協会(NHK)によるテレビ放送がはじまったのが1953年。情報を分け隔てなく伝えること、特定の勢力に左右されない中立性を保つことを理由に受信料を徴収しました。

くわえて受信料を受け取ることには法的な理由があるとしています。それが1950年に公布された「放送法」。ここには受信する設備を設置した人は契約を結ばなければならないと記されています。戦前のラジオの許可書のなごりが残されているとも言えます。

NHK受信料③:東京オリンピック2020ではインターネット受信料も?

インターネットが普及するにつれて、その接続機器は「受信設備」に相当するという見方も登場。受信料支払いの制度化がNHK内で議論されました。しかし、必ずしも全員がインターネットに接続できる環境ではないことから、その構想は立ち消えとなりました。

2020年に開催される東京オリンピックにて、NHKはテレビ放送とインターネットの同時配信を予定。現在NHKは受信契約を結んでいる人のみ視聴可能とする方針です。スマホやパソコンで利用登録すると無料で観られますが、受信契約がなければ制限が加わるとのことです。

NHK受信料④:スクランブル放送化されるとどうなる?

参院選2019の結果が出てから話題にのぼることが増えたのがスクランブル放送化。現在、受信料を支払っていなくてもNHKを視聴すること自体は可能です。スクランブル放送を導入することにより、受信契約を結んでいない人が視聴できる状況がなくなります。これは、受信料の支払いにおける不公平感をなくすことでもあります。

インターネットの普及によりNHKを必要としない、受信料を支払う経済的余裕がないなど、この議論の背景はさまざまです。すでに民間はB-CASカードによる衛星放送のスクランブル放送を実施。海外における視聴に限っては、NHKもスクランブル放送を取り入れています。しかしNHKは、公共放送の理念からスクランブル放送化に難色を示しています。

NHK受信料⑤:イギリスBBCと政治は切り離されている

NHKの公共放送としてのモデルがイギリスのBBC。テレビを設置したら受信料を支払う義務が発生する点はNHKと同じです。異なるのは支払い義務の厳しさ。受信料を支払わない人には罰金が科せられ、さらに悪質と判断されたら刑務所に入れられることもあります。

くわえて大きな違いとなるのが政治とのかかわり。BBCに放送免許を与えるのは国王となります。しかし日本の場合は総務省。BBCは、放送と政治が関連づけられていないため、特定の政党や政治家による圧力を受けることはありません。そのためBBCは、放送を通じて政府の政策を批判することも。「公平」を根拠とするNHKとの違いが見られます。

NHK受信料⑥:アメリカの公共放送PBSは寄付により運営

世界のなかで放送事業の規模がもっとも大きいのがアメリカ。大部分が民間放送ですが、番組を観るためには視聴料を支払う必要があります。とはいえアメリカにも公共放送に該当するPBSというチャンネルが存在します。

PBSは、国や州からの交付金のほか、視聴率に影響されない番組趣旨に賛同する企業や個人の寄付により運営。番組の多くは教育系のもの。とくに有名なものが「セサミ・ストリート」です。部分的に国の予算が導入されていますが、寄付がベースとなっているので、政治とのつながりは日本とくらべると希薄になります。

まとめ

こうしたNHK受信料をめぐる議論は、価値観だけではなく所得の格差の拡大やNHK番組の民放化など、複数の領域にまたがる傾向があります。また、戦前から続く政治と放送のつながりも無関係ではないようです。放送コンテンツが多彩になってきている今、日本におけるNHKの役割を改めて考えてみる時期に差しかかっているのかもしれません。