学生ローンの利用者が増えている?高等教育の無償化は本当に進むのか
学生ローンとは、大学生や専門学校生が借り入れることができる消費者金融。一般の消費者金融なら対象外となる未成年の学生でも、融資を受けることができます。わずかではあるものの一般の消費者金融より金利が低い傾向があります。
ここ最近、目立ち始めているのが学生ローンの利用者の増加。経済的に困窮している学生が急増していることが分かります。同時に話題となっているのが高等教育の無償化。参院選2019の争点として注目されているテーマのひとつです。
その一方、国立大学が学費の値上げを開始しているという現実も。いま、高等教育の周囲では何が起こっているのでしょうか。そこで主に大学をとりまく問題や大学生が置かれている状況について、複数の視点から考えてみたいと思います。
【高等教育の無償化①】大学生が学生ローンを利用する理由
大学に入学するとさまざまな奨学金に応募ができ、有利子であればそれなりの確率で借りることができます。それなのに大学生が学生ローンに足を踏み入れるのはなぜなのでしょうか。
両親が離婚した
もっとも多い理由が両親の離婚。主に母子家庭でギリギリの生活をしている、大学の学費に回すための預貯金がないなどのケースが多いようです。家庭の事情を配慮して、大学進学にかかわる費用をすべて自力で工面せざるを得ない学生も珍しくありません。
リストラされた・低所得である
また、大学進学の時期に保護者がリストラされ、必要なお金を工面できないことも、学生ローンに頼る理由。会社勤めをしていても所得が低く、入学初年度に求められる多額の納付金を工面できないという場合もあります。
【高等教育の無償化②】大学生の両親は就職氷河期世代に突入
最近の大学生が学生ローンに頼らざるを得なくなっている背景として、彼ら・彼女らの保護者が「就職氷河期世代」に突入していることが挙げられます。
就職氷河期とは?
就職氷河期とは1990年代半ばから2000年代前半ごろに生じた就職難の時期。現在、40歳前後の人たちが大学を卒業したころに際立った現象です。慢性的な不景気により正規雇用の採用数が激減する一方、派遣会社が規制緩和により一気に増加。多くの卒業生が、非正規社員からスタートせざるを得ない状況におちいりました。
「人生再設計」というネーミングでも話題に
こうした就職氷河期世代に注目があつまるきっかけとなったのが、就労支援にかんする経済財政諮問会議における発言。この世代を「人生再設計第一世代」と言い換える提言にたくさんの批判が殺到しました。現在の大学生の保護者のなかには、この就職氷河期の影響を受けている人が少なくないのです。
【高等教育の無償化③】国立大学の学費は値上げの流れ
大学進学費用の工面が厳しくなるなか、国立大学は学費を値上げする方向で動いています。ここ最近も、いくつかの国立大学が学費を値上げすることを正式に決定しました。
学費を値上げする理由
国立大学の学費は文部科学省が設定する「標準額」に基づくもの。ほとんどの大学は「標準額」におさまる学費となっています。しかし最近は、「標準額」ギリギリまで、さらにはそれを越える学費設定をする大学が出てきました。将来的には私立大学と同じ程度まで引き上げることが目標とされています。
学費免除制度を充実させる?
学費値上げと同時に、経済的に苦しい学生を救済するため、学費免除制度を充実させるとのこと。学費免除の範囲はどのくらいになるのか、免除分を補填する財源は確保できるのか。また、そもそも免除するのに学費を値上げする必要があるのかなど、疑問がかなり残されています。
【高等教育の無償化④】参院選2019の争点のひとつ
参院選2019のキーワードのひとつであるのが「教育の無償化」。とくに保育園に焦点が当てられがちですが、高等教育の無償化も争点のひとつとなっています。
各政党は無償化の方向性を打ち出す
それぞれの政党のマニフェストを見ると基本的には高等教育を無償化する方針となっています。無償化する方法としては、学費の値下げと授業料免除が中心。国立大学の学費を私立大学相当まで引き上げる方針と逆行する提言がなされています。
奨学金制度をめぐる問題は?
大学進学のサポートとして多くを占めている奨学金制度。奨学金をもらっている学生の大部分はいわゆる「利子付き」となります。卒業後、長期にわたって「借金」の返済が続き、なかには自己破産する人がいるという報告も。入学金や学費は大学運営費の重要な一部。無償化を実現するには奨学金制度の改善を避けて通ることはでいないはずです。
まとめ
高等教育の無償化は、参院選2019を目前にひかえ、トレンドワードのひとつとなっています。国際標準の質を維持する、ユニバーサル時代に対応する、どちらの道を選ぶにも大学はそれなりの額の運営費を必要とします。高等教育の無償化は、学費免除制度や奨学金制度の見直しのほか、大学に対する財政支援を上手く機能させることで初めて実現。今後の議論の深まりが不可欠な状況です。