待機児童ゼロはなぜ達成されない?幼児教育・保育の無償化の今後

ある新聞社の調査により、許可保育園に入ることができない「待機児童」の数が7800人以上にのぼることが分かりました。かつて政府は、待機児童ゼロを2017年度末までに達成することを宣言。それを2020年度末に先送りしていました。この達成目標もクリアできなかったことになります。

この夏の参院選2019に向けて、ほとんどの政党が待機児童問題について言及。くわえて幼児教育・保育の無償化も選挙の争点となっています。この2つのテーマは密接に結びついているもの。そこで待機児童をめぐる問題を振り返りながら、幼児教育・保育の無償化の課題を整理していきたいと思います。

無認可保育園により待機児童を減らす?

2019年10月から幼児教育・保育が無償化されることが決定。それをうけて行われた調査によると、全国の75市区町のうちの大部分が、無認可保育園を無償化の対象とする意向であることが分かりました。

無認可保育園は国の指導監督基準を満たしていない施設。それらが無償化の対象となることで、待機児童が減っていく可能性は高まります。その一方、無償化と引き換えに保育の質が下がるのではないかという指摘も目立ちます。

隠れ待機児童の問題は解決したのか?

一部の自治体では待機児童がゼロになったことを公表。そのような報道がでるたびに、Twitterなどで「私の子供は待機しているのに?」と戸惑うお母さんの声が聞こえてきます。その理由となるのが隠れ待機児童が存在するメカニズムです。

待機児童のカウントの仕方は自治体ごとに異なるという一面があります。2017年3月以前の調査では、①保育園に預けられずに保護者が育児休業中、②兄弟姉妹でバラバラの保育園に入っている、③求職活動ができないままでいる、④自治体が補助する保育サービスを利用している、この4つのケースは待機児童から外されていました。

一部の隠れ待機児童は残っている

実際は待機児童に等しいケースをあえてカウントしないことで、待機児童の数を意図的に少なくしているのではないかと批判が殺到。それをうけて、待機児童の数え方があらためて定義され、2017年3月から新たな基準が適用されています。

新しい定義では、復職を希望している保護者の子供はすべて待機児童としてカウント。しかし、地域により事情が異なるという理由から、最終的な数え方は自治体ごとで判断することに。さらに④の自治体が補助する保育サービスはノーカウント。新定義が適用されても待機児童は実質のこる形となりました。

待機児童はどうして増えたの?

そもそも待機児童はどうして増えていったのでしょうか。理由のひとつが女性の社会進出がすすんだこと。結婚・出産後も仕事を続けることが一般的になりました。共働きをしないと家計が苦しい家庭が増えていることも現実問題としてあります。

くわえて、都市部を中心に子供の数が急速に増加したことも挙げられます。都市部の家庭の多くは核家族。子育てをサポートしてくれるはずの両親等と離れて暮らしているケースが目立ちます。そのため待機児童問題はとくに都市部で深刻になっていると言われています。

待機児童の未解決により起こりうる問題

待機児童の問題が解決しないままでいると、どのような問題が起こるのでしょうか。まず、保育園に預けることができないと、保護者は職場に復帰するタイミングを失います。それは、とくに女性の社会復帰を遠ざけると同時に、家庭内の収入の不足をまねくことになります。

保護者の職場復帰が遅れることは、労働力が少なくなることを意味します。少子高齢化の影響により、働き手は今後さらに減少する見通し。子育て世代の保護者は「働き盛り」の世代です。待機児童問題の解決の先送りは、日本の経済に一定の影響をあたえる要因なのです。

また、待機児童の問題が深刻化すると、その地域から若い子育て世代が流出する可能性も。とくに過疎化の傾向がある自治体にとっては大きな痛手となります。そのため保育環境を集中的に充実させ、子育て世代の誘致を試みる自治体が増えてきています。

待機児童ゼロにするための対策は?

待機児童ゼロの目標を達成するために優先的に行うべきことは認可保育園施設の充実です。しかし、その充実のためにはかなりの時間を要するというのが現実。とくに都市部の場合、認可保育園を建設できる広さの土地が限られているという問題が。さらに、人口が集中している地域ほど、騒音トラブルが起きやすく、近隣住民との話し合いが長期化する傾向があります。

たとえ認可保育園をたくさん設置しても、保育士のなり手がいないというのが現状。保育士の資格があるにもかかわらず別業種に就職する人は半分以上と言われています。また、5年内の離職率がかなり高いことも特徴的。労働環境が過酷でありながら賃金が低く、それに見合わないほど責任が重い状況を改善することが、待機児童ゼロに近づくために必須です。

まとめ

幼児教育・保育の無償化と、それを実施するための財源の確保が、選挙に向けた政党のマニフェストに軸になっています。しかし、現実問題として、この施策を実行できる土壌がそもそもあるのか、幼児教育・保育の現場で起こっている状況に目を向けることも大切になります。