もう目を逸らさないで!日本の児童虐待とどう向き合う?

相次ぐ児童虐待のニュースは、社会問題として連日大きく取り上げられています。日本には、昔から「臭い物には蓋をする」という風潮がありました。児童虐待はまさに、臭いものだったのかもしれません。
2018年の児童虐待相談対応件数は、12万件以上で、2017年に比べ1万人以上も増加していました。どんなに議論され、どんなにニュースで重大事件として取り扱われても、増える一方なのが現実です。
そろそろ臭いものを留めておく蓋も、限界に達したのかもしれません。

児童虐待から垣間見える、対応する側(国)の問題点

親が悪いのは当然ですが、責めてばかりでは未来を変えることはできません。これ以上悲劇を増やさないためにも、早急に対応する必要があります。
今回は以下2つの点から、児童虐待を見てみましょう。

児童だけでなく、親も治療を受けるべきではないか

児童相談所は児童を保護した際、児童に対し必要なカウンセリングや治療を行います。暴力を受けたトラウマから、様々な精神病を発病する可能性が高いためです。
ところが、暴力を振るっている側の「親」に対して行われるのは「指導」のみです。暴力を振るってしまう原因、根底にあるものを相談員が親と話し、解決を目指します。ですが、この「指導」には、ある問題点があります。
指導はあくまでも口頭で行われる、話し合いのようなものです。親と相談員が向かい合い、起こってしまったことについて指導を行います。ですが、相手の親はキレやすいことも多く、職員の身に危険が及ばない可能性はゼロではありません。
そのため優しく丁寧な指導内容になりがちで、言い方や物腰が逆に親の逆鱗に触れたり、鬱陶しがられたりという問題があります。お説教にもならず、強制するような言い方もせず、上からの物言いにもならないように、職員は気をつけながら「指導」を行います。
千葉10歳女児虐待死では、児童相談所は一時、女児を施設に保護していました。ですが、「一時」です。その後、両親と面談し、改善されたと判断して女児は家へ帰りました。
もしも現在のように、指導だけで根本的な解決に至るのであれば、女児が悲しい結末を迎える必要もなかったのではないでしょうか。
虐待していた父親は、自身が娘を虐待する様子をスマートフォンで動画撮影していました。精神が正常な人間のすることとは思えず、治療が必要なのは親の方だと分からない人はいないでしょう。
もしも「虐待してしまう、衝動を抑えられない」といった、虐待する親の心理が病であれば、本人である親も苦しい思いをしている可能性があります。
治療を施したり自立を促すシステムもありますが、これらは公的機関ではなく、外部委託です。このような事件が起こってしまっては、民間企業との連携が上手くいっているとは言えません。

日本は公務員が少なすぎる、対応人数に見合わない事件数

世論の中には、対応する人数(児童相談所職員)が足りないのではという意見もあります。児童相談所というのは、公立の組織です。そのため、児童相談所の職員は「地方公務員」にあたります。
児童相談所には、社会福祉士やカウンセラーという専門資格を持った人もいます。ですが、他の職員は例えば市役所にいるような、他の地方公務員同様の試験に合格した人たちです。
採用後の配属先は希望通りになるとは限らず、児童相談所を希望しても児童相談所に配属されるとは限らないのです。
また地方公務員は別部署への移動も多く、十分な経験をしないまま、人の入れ替えが起こることも適切な職員教育ができない理由のひとつです。児童相談所に職員(児童福祉司)として10年以上勤務した経験がある人は、全体のおよそ16%ほどとなっています。
虐待通報件数は5年間で倍に増えているのに、職員数は約2割増です。親から職員が暴力を受けたり、精神的ストレスによって退職したりと、対応する側の環境に多くの問題が垣間見えます。

世界の児童虐待対策は、どうなっている?日本に必要なもの

残念なことに、児童虐待はどの国にもある問題です。日本と世界の違いを比べて、今後やるべきことを見つけましょう。

アメリカの児童虐待では、裁判官が判決を言い渡す

アメリカは州毎に法律が異なりますが、多少の違いはあれど基本的な部分ではほとんど同じ内容を法律にしています。
アメリカには特定職種に対し、児童虐待の可能性を感じた時点で、特定機関に通報する法律が定められています。主に医師や教師が対象ですが、可能性を感じていながら通報を怠った場合には、免許剥奪を含めた罰則が設けられています。
通報を受けると、即時〜2日以内に子どもは保護されます。ほとんどは協力関係にある里親ボランティアの一般家庭に預けられ、保護から3〜6週間ほどで、両親に対して裁判が行われます。
まずは子どもを親から引き離し保護したことが、正しかったかどうかが問われます。
保護が必要な状況であると判断された場合、子どもを家庭に戻すための条件が、親に与えられます。内容や期間は人によりますが、一定期間毎に裁判を繰り返し、完全に問題ないといえるようになってから、家庭に子どもを帰します。
日本と最も大きく違う点は、児童虐待に司法が介入していることです。

可能性があった時点で、重い罪だと感じさせる力が必要

アメリカで虐待した親に「今回の判決」を言い渡すのは、裁判官です。日本では、児童相談所の地方公務員が行います。
アメリカと日本は、カウンセリングや自立支援プログラムの必修など、日本で行なっている外部との連携プログラムと、内容はほとんど変わりません。ですが、この「司法が介入するか否か」というのが、とても大きな相違点なのです。
一地方公務員が判決を下すのと、裁判所で裁判官が判決を下すのでは、心理的効果が異なります。「今回の判決をどう受け止め、これからどうしていくのか」それを一公的機関の中で終わらせるのではなく、裁判所という場所に持ち込むことによって、してしまったことの大きさを認識させる意味もあるのです。

北欧には妊娠中から母親に対し、献身的なケアが行われる

北欧は世界的に見ても児童虐待率が低く、国民幸福度も高いことで有名です。北欧のほとんどの国では、妊娠中から母親に対し、献身的なケアが行われています。身体的な献身はもちろんなこと、子どもが学校に入学する年齢になっても、母親に定期的なカウンセリングが行われます。
育児でストレスや悩みを抱えるのは、何も小さい頃だけではありません。千葉10歳女児虐待死からも分かるように、子どもがSOSを訴えられる年齢になっても虐待が行われている場合もあります。
子どもに対してのカウンセリングや定期面談だけではなく、親(=根本)とのカウンセリングや面談も、大切だということではないでしょうか。
問題が起こってから家庭に介入する日本の機関と、問題が起こる前から話す機会を設ける北欧。
どちらが問題解決へ近いかは、見て取れますよね。

まとめ

対応できる人数を増やし、一人当たりの負担を減らすことで、必ず解決できる問題です。正解も不正解もない育児だからこそ、魅力があって苦しさがあります。それは素晴らしいことである一方、綺麗事では済まされない現実もあるのです。
臭い物に蓋をするのはこれっきりにして、国が対策を進めるときが来たのではないでしょうか。