新型コロナウィルスに続く脅威 バッタの大群の行方

2020年は、中国の武漢市を発生源とする新型コロナウィルスが、世界の政治・経済・生活に大きな影響を与えています。その陰に隠れ、報道される機会がほとんどないものの、経済の低迷に追い打ちをかけると懸念されている現象が。それがアフリカで大量発生したバッタの飛来です。バッタの大群はアフリカから海を越えて、アジア圏に侵入しているのです。

バッタの大群の発生は新型コロナと同じ時期

バッタの大群の発生は、新型コロナウィルスの問題が大きくなり始めていた2月に報告されました。バッタの被害を受けていた国のひとつがソマリアです。ソマリア政府は、バッタの大群の被害により、深刻な食糧危機に陥っていることを認め、緊急事態宣言を表明。加えて隣の国であるケニアも同様に緊急事態を宣言しました。

バッタはどうして大量に発生したのでしょうか。理由のひとつとされているのが2019年の秋の大雨。雨量が通常の3倍となりました。雨量が増えた原因は不明ですが、サバクトビバッタの産卵シーズンと重複。雨により大量に卵がふ化したと言われています。

大量発生したバッタの種類は?

東アフリカで大量発生したバッタは、日本に生息している種類とは異なります。バッタの種類は「サバクトビバッタ」。通常、日本に生息しているバッタは群れを形成しません。しかしながら、サバクトビバッタは群れをつくる習性を持っています。

サバクトビバッタは砂漠地帯に生息するものの、湿気があるところで卵を生みます。そうしないと乾燥によりふ化できないからです。そのためサバクトビバッタは、産卵の機会を逃さないように、雨が降るとあらゆるところで卵を産み付けまくるのです。

アフリカのバッタは海を越える

2003年から2005年にかけてバッタが大量に発生したとき、アフリカに加えて中東にも被害が拡大。そのときは4億ドルもの費用を投下し、バッタの対策に乗り出しました。しかしながら今年の場合、対策の費用は新型コロナウィルスに集中。バッタの大群は、対策が十分になされないまま、海を渡っているのです。

大量に発生したバッタは海を越えてアラビア半島に到着。ソマリア、エチオピア、ケニアで被害が確認されました。アラビア半島は内戦が起こるなど政治的に不安定な状況。とくに半島の南部にあるイエメンは内戦の最中にあり、被害の調査やバッタの駆除の対応に遅れが生じました。

パキスタンを襲撃するバッタの大群

アラビア半島に加えて、バッタの被害はパキスタンにも拡大。インドで農作物を食い荒らしたあと、パキスタンに侵入したようです。パキスタン政府は、緊急事態であることを宣言。世界各国に緊急援助を要請するに至りました。

パキスタンでは、バッタ対策のための報奨金を用意。1キロ集めるごとに20パキスタン・ルピー(約13円)を支払っています。そこでパキスタンの人々は、農地を駆け回りバッタの死骸をかき集めていますが、時間がかかるうえに目立った効果がありません。

中国政府がバッタの大群に危惧する理由は?

パキスタンまで広がったバッタの大群について強い懸念を示しているのが中国政府です。中国政府は、パキスタンでバッタの被害が報告されると、すぐに専門家チームを派遣。さらに3月に入ると、新型コロナウィルス対策と並行して、バッタ被害に備える準備を開始しました。

パキスタンと隣接するのが新疆ウイグル自治区。中東エリアと中国をつなぐシルクロードの重要拠点です。ここから、バッタの大群が西風にのって中国に飛来する可能性を懸念。中国にとってパキスタンは水際対策の対象国に他ならないのです。

バッタ被害に対する日本政府の対応

新型コロナウィルスに国民の関心が集中し、バッタの大量発生・襲来のニュースが特集されるケースはほぼ皆無。しかし実は、ケニア、ソマリア、ジブチを対象に、8億2500万円の資金協力をすることを日本政府は決定済。食料の配布に活用されることが決まっています。

バッタの大群がアジア圏に飛来することで、日本企業のサプライチェーンに影響が出る可能性も指摘されています。実際に日本企業の生産・流通システムに影響が及ぶかどうかは分かりませんが、状況の推移を注意深く見守ると菅官房長官は述べています。

日本もバッタ飛来の被害を受けた過去が

実は日本も海外におけるバッタの大量発生の被害を受けた経験があります。その現場となったのが宮古島と石垣島。1928年にフィリピンにてバッタが大量に発生した際、宮古島と石垣島にも飛来しました。

このときのバッタの種類はトノサマバッタで、サバクトビバッタではありません。島民たちは、バッタから農作物を守るため、金物などを打ち鳴らしたそうです。農作物の被害は拡大するものの、いつの間にかバッタの大群は消えてしまいました。

まとめ

バッタの群れの襲来が中国まで及ぶのか、日本にも影響を与えるのかは未知数。ただ、新型コロナウィルスによる経済打撃に追い打ちをかける現象であることは間違いないでしょう。新型コロナウィルスもバッタの大量発生も、地球温暖化が背景にあると言われています。そのため二つの危機的状況は、決して無関係ではないのです。