ベトナムコーヒーの代名詞チュングエングループのお家騒動とは?

ベトナムに観光旅行に行ったとき、ぜひ飲んでみたいのがベトナムコーヒーです。日本のコーヒーとは異なる甘くて濃厚な味わいがクセになった人も多いのではないでしょうか。

数あるベトナムコーヒー企業のなかで、パイオニア的存在であるのがチュングエン(TRUNG NGUYEN)。ベトナムのファミリーカンパニーのトップに君臨する大企業です。

実は、夫婦で作り上げたこの巨大企業をめぐり、5年に渡るお家騒動が勃発していたんです。そこで、ベトナムコーヒーの代名詞チュングエングループのお家騒動をまとめてみます。

ベトナムのコーヒー文化の変化のなかでチュングエンは急成長

チュングエングループ(TRUNG NGUYEN)がトップ企業となる過程で、ベトナムのコーヒー文化の変化が密接に関わっています。もともとベトナムでは、作り置きしたコーヒーに氷を入れて飲む路上スタイルが一般的。そこに喫茶店文化を浸透させたのがチュングエンでした。

チュングエンを立ち上げたのは、創業者であるダン・レ・グエン・ブー氏とその妻レ・ホアン・ジエップ・タオ氏。とりわけチュングエントップのブー氏は、ベトナムのコーヒー産業の発展を牽引してきたビジネスリーダーで、「コーヒー王」とも称されています。

チュングエンコーヒーは伝統的な喫茶店

現在でもベトナムに行くと、チュングエンの喫茶店にあちらこちらで出会うことができます。レトロな喫茶店のような雰囲気の店舗が特徴的。日本で言うと「喫茶室ルノアール」のような位置づけです。

チュングエングループのお家騒動は2015年にスタート

チュングエンの創業は1996年。夫婦で共同経営するかたちで急成長しました。夫婦のお家騒動が勃発したのは2015年4月。夫でありトップ経営者のブー氏が、妻のタオ氏を突然副社長から解任したことに始まります。

ホーチミン市人民裁判所は、タオ氏を副社長に復帰させるという判決を下しましたが、上手くいきませんでした。経営問題に加えて離婚裁判もあわせて勃発。巨額資産を有する経営者夫婦ということもあり、争いは泥沼化していきました。

経営権争いと離婚問題の同時進行が解決を遅らせる

当初、妻のタオ氏は、副社長の復帰を望み、離婚にも同意していませんでした。しかし、それらが難しいことが判明すると、今度は巨額の資産をどのように分割するのか、という争いに発展。会社の資産と夫婦の資産をどのように線引きするのかが問題となりました。

チュングエンお家騒動が勃発した理由はブランドの停滞?

チュングエングループのお家騒動の根本的な理由ははっきりしていません。ただ、ここ数年のチュングエンの発展は順調とは言えない状況でした。そこから夫婦間の溝とチュングエンブランドの低迷が結びついているという見方も出てきました。

近年は「ハイランズコーヒー」のような外資系企業の進出、ネスレの浸透によるインスタントコーヒー「G7」の低迷、タピオカミルクティーブームによる若者のコーヒー離れから、業績が伸び悩んでいたのです。

デザート化するベトナムのコーヒー文化

伝統的なベトナムコーヒーは2種類・「カフェ・ダー」(氷を入れたブラックコーヒー)と「カフェ・スア・ダー」(氷と練乳を入れたコーヒー)。最近は、そのうえにクリーム、クッキー、ゼリー等をトッピングする、いわゆるデザート系が主流になってます。伝統的なベトナムコーヒーのユーザーは減少傾向にあると言えるでしょう。

妻タオ氏は国家主席に支援を求める書面を送付

妻のタオ史は、離婚裁判をめぐり、グエン・フー・チョン共産党書記長 兼 国家主席宛に、援助を求める文書を送るまでに。実際にベトナム国家副主席が、それを国家主席が受け取ったことを認めました。

国家副主席によると、国家主席はチュングエングループのお家騒動に介入しない方針を表明。この問題を解決するための権限を持っていないことをその理由としました。そして、タオ氏の書面は、最高人民検察院と最高人民裁判所に渡されました。

政治家との関係も密接にあったチュングエン

一般的に、離婚問題の解決を図るためにベトナム国家主席に書面を送ることはありません。それだけにチュングエンがベトナム経済に大きな影響を与えていたことが分かります。実際、この騒動が長引くとベトナム経済に影響が出てくる可能性があり、早急に解決する必要性が叫ばれるようになりました。

チュングエンお家騒動に対する裁判所の決定

決着のめどが立ったのは2019年3月。裁判所は、ブー氏がチュングエンの経営権と株式60%を保有することを認めます(株式の合計時価総額は約270億円)。夫婦の資産分割は60:40となりました。これは、タオ氏よりもブー氏の方が、チュングエンの企業発展の過程の貢献度が高いという判断に基づくものでした。

一方、チュングエングループが保有する土地や建物などの資産は50:50で配分することを決定。土地と建物は、チュングエンの企業資産ではなく夫婦が共有する資産として位置づけられたと思われます。

タオ氏は離婚によりベトナム女性資産家第4位に

結果、妻であるタオ氏はベトナム女性資産家第4位に浮上することに。お家騒動後に彼女が保有する資産額はあわせて約190億円に上昇しました。さらにブランドのひとつキングコーヒーもタオ氏に渡ったため、今後はチュングエンとライバル関係になります。

まとめ

ベトナムではさまざまなメーカーのコーヒーを飲むことができますが、まだまだチュングエンブランド、そのインスタントコーヒーブランド「G7」は圧倒的な存在感を示しています。コーヒーブランドをめぐるさまざまな攻防を想いながらベトナムコーヒーを飲むと、また違う味わいが感じられるはずです。