カルロス・ゴーン被告の密出国で再注目の国レバノン!どのような国?

日産自動車の前会長で、会社法違反などに問われていたカルロス・ゴーン被告が、大型の箱に身を隠して日本を出国したことが大きな話題となりました。総額22億円かかったとされる、映画のような出国劇の詳細が明らかになると共に、再注目されたのが中東のレバノンです。ゴーン被告はブラジル生まれですが両親はレバノン人。レバノンは彼の母国でもありました。そこでレバノンとはどのような国なのか、ゴーン被告の受入れの賛否の背景も併せて解説します。

地政学的に重要性が高いレバノン

レバノンは東地中海に面している国。その国境はイスラエルとシリアに接しています。紛争が多発する同地域において、レバノンは地政学的にも重視されている国。1970年代から1990年代にかけて断続的に起こったレバノン内戦では、アメリカが軍事的・政治的に積極的に介入したことでも知られています。

レバノン内戦とは、キリスト教徒とイスラム教徒のあいだで起こった紛争。その余波は現在まで続いています。レバノン国内には、いくかの影響力を持つ宗派や政党があります。その背後には、それぞれ外国政府の影があり、勢力争いを劇化させる要因となっています。

政治的圧力により首相の辞任騒動も

レバノンでは、たびたび首相の退任劇が起きています。そのひとりがサード・ハリリ元首相。2017年、サウジアラビアを訪問している最中にハリリは突然辞任することを発表。その背景には、イランとサウジアラビアの圧力があったと言われています。その後、ハリリ元首相は辞任の発表を撤回しました。

現在のレバノンは経済の低迷期

現在のレバノンの経済状況はかなり悪い状況にあります。レバノンは輸出資源が少なく、大部分を輸入に依存。そのため経済効率が悪く、海外からの資本の流入も減少の一途をたどっています。その結果、ここ数年の経済成長率は1%~2%のあたりを低迷。2019年はゼロ成長と最悪レベルになってしまいました。

それに追い打ちをかけるように、汚職や無駄な出費などが重なり、債務は膨れ上がることに。国内総生産(GDP)の150%に相当する850億ドルもの国家債務が問題視されています。財政が国民の生活に還元されることはなく、債務の返済や官公庁の不透明な経費に充てられています。

レバノンではとくに若者の失業率が深刻化

レバノンの35歳未満の労働者の失業率は37%と言われています。このような状況から、とくに若者層を中心に、レバノン政府に対する反発が高まりつつあります。昨年からレバノンの首都であるベイルートを中心に反政府デモが大規模に繰り広げられるようになりました。

レバノンの政策は宗派代表者により決定

レバノンの政治・経済が効果的に機能しないことの一因として、その独特な政治風習が背景にあります。一般的にアラブ諸国では、1名の絶対的権力者が国の全政策に影響を与えます。それに対してレバノンは、さまざまな宗派を代表する政党に権力が分散されています。

政治に関連するポストは、公認されている18の宗派に割り当てられます。国民議会はキリスト教徒とイスラム教徒が半分ずつ。大統領はキリスト教マロン派で、首相はイスラム教スンニ派。そして国民議会議長のポストにはイスラム教のシーア派の人物が就きます。

利益を分配することが政治目的?

レバノン国内には多様な宗教や宗派に基づくグループがりますが、公認されているのは18のみ。それらに国の運営に関わるポストが与えられます。そのため政治家の役割は、獲得したポストや利益を同じ宗派の構成員に流すことと言っても過言ではありません。

政治改革の必要性が叫ばれているレバノン

このような政治体制により、国家の利益よりも宗派や個人の利益が優先され、その結果、現在の経済悪化があると考えるレバノン市民が増えています。また、政治体制の一体感のなさが、外国から干渉を受ける要因であるという指摘も。政治体制そのものを改革しなければレバノンは危機的状況から脱することはできないという声が目立ちます。

レバノンの政治体制は利益独占の温床に

宗教・宗派を基準とする政治体制であるため、自分が属するグループが権力を獲得したら、自らも何らかのチャンスが得られる可能性が広がるはずです。しかし実際は、宗派の利益も公平に配分されていないという問題が。一部の上流階級グループに利益が独占されていると、多くのレバノン市民は不満を感じています。

ゴーン被告の逃亡の対するレバノン国民の反応は?

経済的に低迷するレバノンで、カルロス・ゴーンの存在はどのように受け止められているのでしょうか。輸出資源に乏しく、経済的苦境に立たされているレバノン。海外で活躍するレバノン人の送金により支えられてきた歴史から、基本的にゴーン被告の過去の活躍はネガティブなものではありません。

とりわけ、グルーバル企業としても知られていた日産の経営トップとして手腕を発揮し始めると、カルロス・ゴーンはレバノンの英雄として評価されました。国際的に成功をおさめたことで、レバノンの経済を支える重要人物として位置づけられたと言えます。

富裕層に対する反発が強くなるレバノン

しかしながら、このような一部の成功者は、本当にレバノン経済に利益を還元しているのか、疑問を抱く層もあらわれます。政治腐敗の撲滅を訴えるデモが活発になるタイミングで、巨額不正の疑惑を抱えたまま帰還したのがゴーン被告でした。そのためレバノン市民のすべてがゴーン被告の帰国を歓迎しているわけではないようです。

まとめ

映画のような逃亡劇により日本のみならず世界の注目を集めることになったカルロス・ゴーン。同時に彼が入国先としたレバノンの状況にも光が当たることになりました。経済的な成功者のシンボルでもあるゴーン被告が母国レバノンでどのように受け止められるのか、レバノンの政治状況もあわせて注目していきたいところですね。