関税から政治を学ぼう!関税の引き上げが世界に与える影響を考えてみる

2019年、世界各国では関税をめぐる交渉が話題に。その理由となるのがアメリカのドナルド・トランプ大統領の貿易政策。日米貿易交渉だけではなく、対中国、対メキシコなど、さまざまな国を対象に関税を引き上げる旨の発言が物議を醸しました。

トランプ大統領は、関税の支払いを避けるために「企業は米国に移ってくる “companies are moving to the U.S.”」とツイート。関税の引き上げにより、国内商品を守るだけではなく、
アメリカの海外工場を国内に戻す意図があると指摘されています。

【関税から政治を学ぶ】関税とは輸入した商品にかける税金

関税とは、簡単に言うと、輸入した商品にかける税金のこと。日本には、いろいろな外国の商品が売られています。それらは日本に輸入されたとき関税がかかっています。商品の値段は、関税として支払った分を含めて設定されることが大部分です。

たとえば観光でベトナムに行くと、数多くの日本の商品を見つけることができます。それらは、日本で売られている価格の約2倍。船便や空輸便などの輸送コストに加え、関税分を含んだ価格設定になっていることが大きな要因です。

【関税から政治を学ぶ】関税をかける目的は国内の産業を保護すること

輸入商品に対して関税をかける目的は、第一に国内の産業を保護するため。大量生産された商品が無課税で輸入されると、国内で製造された商品よりも安く売られることになります。そうなると、国内の産業は成長する機会を得ることができなくなってしまいます。

日本での関税の国庫収入は全体の2%ほど。日本をはじめとする先進国では、国庫収入の関税が占める割合はさほど大きくありません。しかし大部分の発展途上国では、今日でもなお、貴重な国の財源とされています。

【関税から政治を学ぶ】関税を支払うのは輸入する者

そもそも関税を支払うのは誰なのでしょうか。一般的には、輸入する者が、輸入する国の税関に対して支払うものです。商品が輸入国に到着しても、関税における支払いが行われなければ、商品を引き渡してもらうことができません。

関税率は、状況を見ながら、定期的に見直されます。貿易交渉の大部分は関税の問題に割かれていると言ってもいいでしょう。そして、中国とアメリカのように、関税率の交渉がこじれると、さまざまな影響があらわれてきます。

現在、一部のアメリカ企業は、中国工場をベトナムなど他国に移転する動きを加速させています。対中関税率が引き上げられたら、中国工場からアメリカに輸入するコストが大幅にアップ。中国で生産する意味がなくなることがその主な理由です。

【関税から政治を学ぶ】関税をかけることのメリット・デメリット

輸入される商品に対して関税をかけることには、メリットとデメリットがあります。もし関税が完全に撤廃されたら、安価で良質な商品を製造できる国が有利に。消費者も、良質な商品を安い値段で購入することができるようになります。

しかし、長期的にみると、その国の産業力が弱体化してしまうことに。同じ商品を製造する国内企業は競争に負け、その産業全体の成長が阻まれます。国内産業が弱体化すると雇用機会も減少、国民の生活にも一定の影響が出てきます。

【関税から政治を学ぶ】貿易ルール①自由貿易協定(FTA)

関税は、各国の産業の保護と結びついていることから、定期的に国家間で交渉する機会が設けられます。交渉の公平さを保つために国際的な貿易ルールを策定。その軸となるのが自由貿易協定(FTA:free trade agreement)と呼ばれるものです。

自由貿易協定は、輸出と輸入の両方を互いに制限しないことを約束するもの。この協定により自由な貿易が保証されます。しかし、安くて良質な商品が輸入されることで、打撃をうける産業も出てきます。

アメリカでは日本製の車が人気。それによりアメリカ自動車産業の反発が強まっています。そこで日本製の車の競争力を弱めるために、トランプ政権は25%の高関税をかけることを検討しています。

【関税から政治を学ぶ】貿易ルール②経済連携協定(EPA)

自由貿易協定を軸に、労働者や知的財産の移動、投資保護のルールなど、対象となる範囲を広げたものが経済連携協定(EPA:Economic Partnership Agreement)です。

国家間の経済制度を調和させる、サービス、投資、さらに電子商取引など、さまざまな経済取引の連携を強化することを約束しています。

外務省は、自由貿易協定と経済連携協定の両方を締結することを推奨。それにより、関税の壁が低くなるだけではなく、投資やサービスなどの面においても、幅広い効果が期待できると考えているからです。

【関税から政治を学ぶ】貿易ルール③環太平洋パートナーシップ協定(TPP)

環太平洋パートナーシップ協定(TPP:Trans-Pacific Partnership Agreement)は、例外なき関税撤廃を原則とするもの。先の2協定は2国間の交渉が基本ですが、環太平洋パートナーシップ協定は多国間交渉。その分、ハードルが高くなる傾向があります。

2016年11月の大統領選挙でトランプが当選。その直後、環太平洋パートナーシップ協定を離脱しました。現在は、オーストラリア、ブルネイ、カナダ、チリ、日本、マレーシア、メキシコ、ニュージーランド、ペルー、シンガポール、ベトナムの11か国が参加しています。

まとめ

トランプ大統領の言動により、関税という言葉を聞く機会が増加。関税率は、国内産業の成長戦略とも大きくかかわってきます。そのため定期的に行われる貿易交渉は、とくに注目度が高くなる傾向が。関税という制度には、政治と経済の深いつながりがあるのです。