日米交渉は参院選2019の争点とならない?トランプ大統領のツイートの真意を整理

ドナルド・ジョン・トランプ米国大統領が、夫人とともに日本に来日。2019年5月25日から28日にかけて、ゴルフ接待、大相撲観戦、天皇・皇后両陛下との会談、安倍首相との首脳会談などのスケジュールをこなしました。

今回は、トランプ大統領らに対する異例ともいえるおもてなしも話題に。日米の強固な関係を対外的に発信することが狙いにあったとされています。忘れてはならないのが水面下で進められている日米交渉。とくに日米貿易に関わる事項が論点とされています。

憶測をよぶトランプ大統領のツイート

トランプ大統領と安倍首相による日米首脳会談では、日米貿易交渉が継続的に行われています。交渉の進展はトランプ大統領にとって重要な問題のひとつ。アメリカの生産・製造業界の意向が強いこともあり、政権の支持率の増減に直結する事項だからです。

2019年5月26日、交渉結果を公開するタイミングについて、トランプ大統領は意味深長なツイートをしました。それは、日米貿易の進展の公表は7月の選挙後まで待つということ。日本の参院選2019が念頭にあることを、ある意味、暴露した形になります。

【日米交渉の論点①】自動車関税の引き下げ

アメリカは日本の最大の自動車輸出国。それに対して、日本市場におけるアメリカ産の自動車の流通はぱっとしません。この点についてトランプ大統領は不満を表明。日本はもっと市場を開放するべきであると主張してきました。

トランプ大統領は、日本が市場開放に応じない場合、日本製の自動車や部品に20%の関税をかけると有権者に約束。日本側は、企業の大部分が現地生産に切り替えている点を強調、アメリカの雇用創出に貢献しているという観点から、着地点を見出すかまえです。

【日米交渉の論点②】牛肉・豚肉等の関税の撤廃

最近の日本では、オーストラリア産の安い牛肉や豚肉が増加。これはTPP(環太平洋経済連携協定)の発行による結果です。しかしアメリカは、2017年にTPPを離脱していることから適応外。アメリカ産の牛肉の輸出が実質的に抑えられている状態にあります。

それにより関連する業界の不満が爆発。トランプ政権は、次期選挙に向けて早期にこの問題を解決する必要があります。日本は、牛肉・豚肉の関税をTPPと同じ程度にまで引き下げること提案し、アメリカが要求している輸出量の増加に応えると見られています。

【日米交渉の論点③】円安けん制のための為替条項の追加

ムニューシン財務長官が通商協定に盛り込むことを求めているのが「為替条項」。その趣旨は、円安を誘導する政策をけん制することにあります。安倍政権は、円安をすすめることで輸出の促進を図ってきました。それにトランプ政権が「待った」をかけた形になります。

「為替条項」が協定に含まれると、金融政策等にトランプ政権が介入する形に。また、日本の自動車の輸入に一定の規制をかけるトランプ政権の方針を加速させることになります。そこで日本は、通商協定と為替問題を切り離して議論することを求めています。

【日米交渉の論点④】北朝鮮の非核化の進展

2019年2月にトランプ大統領は、ハノイで米朝首脳会談を行いましたが、協議は決裂。進展が見られないまま現在に至ります。とはいえトランプ大統領は、ミサイル発射や核実験の回数が減っていることを挙げ、北朝鮮の状況は好転していると述べました。

好転とする見方の根底にあるのが、日本が大量の防衛装備品をアメリカから購入している点。トランプ大統領は、護衛艦「かが」を視察したあとワスプ艦上で演説を行いました。これにより、「軍事的に一体化する日米」と「太い顧客である日本」が同時に発信されました。

今回の来日におけるトランプ大統領の狙いは?

今回の来日では、安倍首相との緊密さをアピールするものの、日米交渉の具体的な進展は不明。トランプ大統領にとって重要なことは令和初の国賓となること。いちばんの狙いは、自身の偉大さを国内に周知することにあり、日米交渉の決着ではなかったようです。

トランプ大統領は来日前、令和初の国賓として招かれることを、意気揚々と話していたと言われています。そのため、今回の来日で特に重視していたことは、天皇・皇后両陛下との会談、そして令和初の歓迎式典だったのかもしれません。

日米交渉の先送りによる安倍政権のメリットは?

日米交渉の結果は参院選2019のあとまで宙づり状態。これは安倍首相側が打診したとする見方が有力です。とくに貿易問題は、通商協定の内容次第では特定の業界の支持をまるごと失う可能性が。参院選2019を控える安倍政権にとっては一定のリスクがある事項です。

トランプ大統領のフライングツイートにより、日米交渉の成果が参院選2019の争点とならないことが判明。トランプ大統領は、早期決着できない事情が日本側にあることを国内にほのめかし、同時に安倍政権に「貸し」を作ったという意味で、一枚上手だったようです。

まとめ

今回のトランプ大統領の来日は、数多くの話題を提供したものの、肝心の日米交渉の結果は8月まで待つことになりそうです。ゴルフ、大相撲観戦、歓迎式典のテレビ中継など、異例ともいえる公開ぶりが目立った今回の来日。日米交渉を、有権者にアピールするためにイベント化したい、両者の思惑の一致の結果だったのかもしれません。