皇室の海外訪問が持つ意味は?「皇室外交」ではない?政治と区別される理由は?

日本では、皇室の方々が親善や交流を目的に海外を訪問されたことが、たびたびニュースで報じられます。オランダ王室に代表されるように、長期にわたって皇室と交流がつづき、通常の国際交流にとどまらない、深いむすびつきが見られる国もあります。

皇室の方々による諸外国との交流を「皇室外交」と表現されることがあります。ただ宮内庁など皇室の関係者は、「皇室外交」という呼び方は適切ではないとしています。なぜなら、皇室の方々による訪問は、いわゆる外交とはまったく趣旨が異なるからです。

【皇室の海外訪問】海外訪問は「交渉」が目的ではない

一般に、「皇室外交」という表現が不適切とされるのは、皇室の政治利用を避けるためとされています。実際、その意味を探ってみると、「外交」という言葉自体にニュアンスの違いが感じられることは確かです。

「外交」は、英語にすると“diplomacy”となります。この語源はフランス語。「二つに折る」という意味の“diplomacie”に由来します。「折られた手紙で折り合いをつける」、交渉や駆け引きという意味が、外交という言葉に含まれているのです。

「交渉」の目的は、国家の利益のために他国と関係を築くこと。他国は数多くありますが、そのなかで自国にとって重要な国を格付けする傾向が。皇室の方々のご訪問では、国を格付けすることはありません。それが、いわゆる外交と明確に区別される大きな理由です。

【皇室の海外訪問】天皇が日本国民統合の象徴とされる意味

5月1日に、新天皇が即位に際してお言葉を述べられました。そのなかに、「憲法にのっとり、日本国及び日本国民統合の象徴としての責務を果たすことを誓い、国民の幸せと国の一層の発展、そして世界の平和を切に希望いたします」という箇所があります。

ここで触れられた「象徴」という言葉は、日本国憲法の第1条に由来します。そこには、天皇は日本国の象徴であること、そしてその地位は「日本国民の総意に基く」とあります。

とくに天皇皇后両陛下が海外をご訪問されると、たいへん歓迎されます。それは、海外の人にとっても特別な存在であり、訪問が国民の総意であると認識されるから。外交の一環として訪問する場合と、受け取り方がかなり変わることも見逃せない点です。

【皇室の海外訪問】海外訪問は「公的行為」にふくまれる

皇室の方々による海外訪問は、外交と区別されるものの、政治の世界とまったく接触がないわけではありません。そこで新たな区別がでてきます。それが「国事行為」と「公的行為」です。

日本国憲法第4条には、天皇は「国事に関する行為のみを行ひ、国政に関する権能を有しない」とあります。国事とは、国家にかかわる形式的な行為のこと。その数はとても多く、例えば内閣総理大臣の任命や、憲法改正等の公布などがあります。すべて内閣の助言や承認が必要とされ、その責任は天皇ではなく内閣が負います。

天皇をはじめとする皇室の方々の海外訪問は、国事ではないが私的でもない「公的行為」いう位置づけ。海外訪問の目的は、国際親善、表敬訪問、そして記念式典への出席もそこに含まれます。ただ、「公的行為」については、法令などで定めされるものではありません。

【皇室の海外訪問】オランダとの交流は戦後の友好関係につながる

天皇陛下の海外ご訪問先には、日本により戦争の被害を受けた国がふくまれています。オランダもそのひとつ。第二次世界大戦中、現在のインドネシアであるオランダ領東インドで、日本軍がオランダ人を抑留したという歴史があります。

そのため、当初オランダでは反日感情が激化。1971年に昭和天皇が訪問された際は、補償を訴えるオランダ人が集まり、緊迫した状況になりました。その後も、オランダへの公式訪問を継続。交流を重ねるなかで反日感情は薄らぎ、今日の友好関係に至るとされています。

【皇室の海外訪問】世界大会参加を通じてグローバルな問題を共有

くわえて、世界大会などへの参加が注目される機会も目立ちます。とくに有名な例が、1998年、美智子皇后さまがインドの国際児童図書評議会の世界大会でなされた基調講演です。インドの核実験をうけて参加がみあわせられ、ビデオメッセージという形となりました。

また、専門家が集まる世界フォーラムに参加されることも。有名な例のひとつが、新天皇が皇太子時代に力を入れられた世界水フォーラムへの臨席です。世界中の水の専門家が集まる場で、交流や意見交換などをなされました。これは、水問題の解決が世界の平和につながるという考えから実現しています。

まとめ

皇室の方々の海外訪問は、交渉することが目的ではなく、訪問先に序列をつけることもありません。そのため、国家の利益を念頭におく「外交」とは区別する必要があります。とはいえ、海外訪問が公的行為として続けられることで、国家間の友好な関係が築かれる、世界共通の問題が認識されるなどの効果が。直接的ではないにせよ、政治がよい方向に向かう流れができることがあります。