日米地位協定って何?他国との違いは?現状と課題を整理

日本国内には、広大な米軍基地が点在しています。それが可能となるのは、日米安保条約の第6条にて、その施設や区域を使うことを許可されているから。さらに細かい規定を記したのが、28条からなる日米地位協定です。1960年6月に、日米安保条約とともに国会で承認され、今日にいたります。

日本国内で、日米地位協定が話題となるのは、米兵による犯罪や、訓練中に米軍の事故が起こったとき。とくに議論されるのが、米兵が「公務中」であったことから、日本の法律が適用されないことの是非。アメリカはちゃんと処罰しているの?と批判の声があがることも少なくありません。

日米地位協定は米軍の「地位」にかかわる取り決め

日米地位協定は、占領軍のうちアメリカ軍隊だけ駐留することを認める、日米のあいだの安全保障条約(旧安保)が起源。戦後の1951年に結ばれたものです。1960年、新たに安全保障条約(新安保)が締結され、あわせて米軍の駐留にかかわる事項が条約化されました。それが、日米地位協定です。

日本とアメリカの関係が不対等だと言われることが多いこの協定。それは、2国の関係性が、戦後の統治の時代にさかのぼるからです。1945年から始まるアメリカ統治は、1951年9月のサンフランシスコ講和条約の締結とともに終了。同日に取り交わされたのが旧安保です。そのため日米地位協定にも、統治時代のなごりが残される結果となりました。

問題となるのは日本の法律の適応範囲

日米地位協定にふくまれている法律の問題を実感させるのが、米兵が犯罪をおかしたとき。第17条で、公務中に起こった問題をさばくのはアメリカの法律と明記されています。たとえ公共の場で起こった事件や事故であっても、裁判権はアメリカ。そのため、日本の法律は適用外となり、裁判所は関与することができません。

ひき逃げをした米兵を逮捕したとしても、公務中であれば釈放する流れに。その後、アメリカ側で処分を決定します。しかし、減給など軽い処分となることが大部分。1995年に起こった「沖縄米兵少女暴行事件」の場合は、公務外に起こった事件。しかし、米軍が引き渡しを拒否したことにより、問題が大きく取り上げられることになりました。

日米地位協定によるメリットは?

日米地位協定のおおもとにあるのが日米安保条約。この条約を交わすメリットとなるのが、アメリカの巨大な軍事力により、日本を防衛できるという点。日本を攻撃した場合、アメリカ軍による報復をうけることが示唆されます。アメリカの軍隊が日本国内に駐留していることは、一定の抑止力になっていることは確かです。

また、軍事費にかける予算が少なくて済むというメリットも。日本の軍事費は、他の先進国とくらべると、かなり低めであることは確か。また、軍隊制度がなく、兵役の義務もありません。韓国では、有名俳優も例外なく、入隊して兵役につくことは知られた話。アメリカの防衛と日本の軍隊の有無は、セットになっている側面があると言えます。

NATOは対等な国家の関係が原則

日米地位協定の問題を考えるとき、引き合いに出されるのが北大西洋条約機構。通称、NATOと呼ばれる、アメリカとヨーロッパ諸国が結んでいる軍事同盟です。NATOの特徴は、特定の支配的な国がないこと。加盟国それぞれが対等な関係にあり、何かを決めるときは、「全会一致」であることが原則です。

NATOは、それぞれの国の自立性を重視しており、「派遣国」と「受入国」の関係はなし。それに対して、日本とアメリカのあいだの関係は、「派遣国」に対して「受入国」がさまざまな特権を認めるというもの。1960年以降、いちども改正がなされておらず、戦後の日米の位置関係が色濃く残っていることが分かります。

ドイツやイタリアは協定を継続的に見直し

ドイツやイタリアは、日本と同じく、第二次世界大戦の敗戦国。日本と同じように、米軍基地などの取り扱いに関わる、独自の協定を結んでいました。しかし現在は、イタリアもドイツも、米軍基地を管理する権利をすべて回復しています。

ドイツは、1980年代に米軍航空機の大事故が続き、1993年に大きな改定が実現します。それにより、国内法を適用させる範囲がひろがりました。イタリアは、多数の死者を出した1998年の海軍の事故をきっかけに、訓練や飛行を「許可制」に改定。両国とも、定期的に地位協定を見直し、こまやかに改定をすすめています。

沖縄県は独自に外国の地位協定を調査

日本のなかでも沖縄県は、米軍基地が多いことから、とくに日米地位協定の影響を多く受けてきました。そのため、世界各国の地位協定の調査をすすめています。沖縄県庁のホームページには、地位協定に関するポータルサイトがあり、これまでの調査結果や関連する情報を閲覧することができます。

ドイツ、イタリアのほか、飛行禁止や制限の権限をもつイギリス、外国軍隊を法律できびしく規制するベルギーの事例などを紹介。さらに、韓国、フィリピン、イラク、アフガニスタンの地位協定の研究結果も公表しています。それらにより、アメリカとの地位協定は、国民感情や状況にあわせ、改定されていることが明らかになりました。

まとめ

日米地位協定に関する議論は、沖縄のような地域固有の問題がある地域をのぞくと、事件や事故があったときだけに限られてしまう傾向があります。しかし、他国でも、日本と同じような事件・事故が相次いでおり、それをきっかけに改定につなげています。そのため、日本国内に限られないグローバルな流れのなかで、地位協定のあり方を考えていく必要があります。