日朝首脳会談の見送りが検討はWTO敗訴が影響?今後の展開は?

安倍晋三首相は、韓国の文在寅大統領との首脳会談を見送る方針であることが伝えられました。この首脳会談が行われる予定だったのは2019年6月。大阪でひらかれる20カ国・地域首脳会議のときに行う方向で調整が進められていました。

会談が見送られる理由として挙げられているのがWTO敗訴の影響です。韓国は、福島や茨城など8県の水産物を輸入禁止とすることを決定。日本はそれを不当であると訴えたものの、敗訴という結果に。被災地の水産物の信頼回復に一定の影響を与えるWTO敗訴は、安倍政権にとっても看過できない出来事だったと思われます。

WTOはどんな役割を担う組織?

WTOの正式名称は、World Trade Organization(世界貿易機関)。1995年1月1日に設立された国際機関です。WTO協定にて、貿易に関するさまざまな国際的なルールを定めており、新たに生じた課題の解決にも取り組んでいる機関です。

WTOの基本的な原則は次の3つです。
1.自由(関税の低減、数量制限の原則禁止)
2.無差別(最恵国待遇、内国民待遇)
3.多角的通商体制

日本の水産物の輸入をめぐる今回の決定には、「被災地の復興の妨げになる」「現段階では仕方がないのでは」など、賛否両論が噴出。少なくとも分かることは、日本のWTO敗訴は、他の国が日本の水産物の輸入の是非を検討するとき、ひとつの前例になる可能性が高いということです。

WTO敗訴により懸念される影響は?

WTO敗訴が日本に与える影響は、水産物の韓国への輸出だけではなく、震災復興や日朝関係など、多岐にわたります。そこで、考えられる影響として3つ取り上げます。

韓国での販路拡大を狙う水産物の影響

とくに影響があるとされるのが、韓国に売り込みやすい水産物を主力商品としているケース。とくに話題となっているのが、宮城の名産であるホヤ。ホヤが消費されるのは主に東北地方、まだ日本全域に定着しているとは言えない現状があります。

それに対して、ホヤの消費が活発な国が韓国。韓国では、ホヤをまるごと購入、しょう油やコチュジャンを添えて刺身のように食べるそうです。日本国内における市場が限られているからこそ、WTO敗訴は少なからずショックを与える結果となりました。

水産物の安全性への信頼が揺らぐ懸念

加えて、水産物の安全性がWTOに認められなかったことは、被災地の復興を進めていくうえで、マイナスに働のではないかという心配の声があがっています。

例えば、海外にホタテやイカを輸出しているのが青森。かつては韓国にも輸出していたものの、現在の輸出先は中国がメイン。そのため、売り上げなどに大きな影響はないとされています。しかし、安全性への信頼が揺らぐという間接的な影響は避けられません。

日本は、水産物の安全性を示すため、最新の技術を使って厳しい検査を実施。それをパンフレットなどで、世界各国にPRしている最中でした。そのため、今後、検査の方法を周知するなど、さらに安全性を訴えていく必要に迫られています。

日韓関係のさらなる冷え込み

長らく解決していない従軍慰安婦問題だけではなく、海上自衛隊のP1哨戒機にレーダーを照射したという疑い、それぞれの国における反日・反韓感情の強まりなど、両国が歩み寄ることを難しくするような状況が続いています。

このように、日本と韓国は、水産物の輸入をめぐる問題が起こる前から、関係が冷え込みがち。韓国の水産物の輸入規制をめぐる問題がヒートアップすることで、日韓関係の冷え込みがさらに加速するのでは?と懸念する声も目立ちます。

前向きな対応を開始するケースも

WTO敗訴に際して、前向きに動き出す人たちも。販路拡大の方向性を見直すきっかけにするケースもあらわれています。例えば、国向でのホヤPRを充実させる取り組み。海外への販路拡大ではなく、国内消費を活発にすることに、力を注ごうというものです。

韓国では家庭で気軽に食べられているホヤですが、日本国内における消費は限定的。食べたことがないという人も多いのでは。そこで、ホヤのおいしい食べ方を紹介するなど、日本における認知度アップを狙っているそうです。

また、海外における販路拡大のターゲットを、韓国から中東に切り替えるという試みも。ドバイなど中東エリアへの販路拡大の実績がある自治体も多く、ある程度の土壌があります。そのため、魚介類の輸出先は、韓国に固執する必要はないと考える人も多いのです。

観光や文化のエリアでは熱い関係にある日韓

安倍晋三首相と文在寅大統領の首脳会談が見送られる可能性が象徴するように、日韓の関係はますます冷え込んでいくのでは…。そのような後ろ向きの印象が持たれがちですが、観光や文化のエリアでは、まだまだ互いに対する関心が高いという傾向が。

例えば、テレビドラマや映画。かつての熱狂的な韓流ブームほどではないにせよ、韓国ドラマは衛星放送の主要プログラムのひとつ。韓国の俳優やアイドルグループのファンも根強く存在します。また、日本のドラマ人気が高い韓国。有名なドラマをリメークするケースも少なくなく、その影響で日本語を学び、留学する韓国人学生も多いんです。

さらには、韓国人の主な旅行先のひとつが日本。円安の影響により物価の差が縮まっていることに加え、日本側も韓国語のパンフレットやホームページを充実させるなど、韓国人旅行者を迎え入れる環境を整えた成果があらわれてきています。

まとめ

WTO敗訴のニュースは、被災地の復興にかかわる部分もあり、日本にショックを与えたことは確か。日韓関係の改善は遠のくのではないかという懸念も生まれています。とはいえ、水産物の販路拡大や観光・文化面の交流については、前向きにとらえることができる流れも。これからも、両国の関係を、政治、経済、文化等、いくつかの角度から見守ることで、新しい潮流を目撃できるかもしれません。